とある民族音楽学者の日記

長年のフランス生活で培ったノウハウをシェアしたいと思います。よろしくお願いします。

語学コンプレックスを拭い去ろう

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス在住11年に突入しました。その間、日本人と日常生活で一切関わることがない生活をしていました。もともと、留学したばかりの時、英語ばかり話す私に歌の先生が釘をさしたのがきっかけで、なるべくフランス人に溶け込むようにしていました。また、通っている学校に日本人が少なく、特に大学に入って以来、同じクラスには日本人が一人しかいませんでしたし、職場ではフランス人に囲まれていました。

 

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drapeau de la France

そんなこんなで、最近フランス人にアレルギー反応みたいなものが出てきました。

 

フランスというのは、階級社会で、かつ人種間の交流がほぼない社会です。おそらく、これはどこも同じ。もちろん、学校や職場は人種が混ざっていますが、中学教員時代の職場(公立学校)の教員はフランス人だけ、職員にもアジア人すらいませんでした。白人率も高いです。(差別でなく、これが異民族社会の実際です。また、アジア系フランス人は、ビジネス方向に行くんだと思います。)私はそのレクトラ(教育委員会的なもの)で初の日本人の一般教科の教員でした。

 

最初の赴任先は、フランスでもっとも有名なお城がある場所。お金持ち地区です。フランスでは、共働きの場合などは家政婦さんを雇うのが一般的です。家政婦といえば、優秀で有名な民族がいます。それがフィリピン人。一般のフランス人には、フィリピン人も日本人も同じアジア人なのです。想像してください。この違和感。家でお掃除してくれる人の親戚みたいな人が、自分のプロフェッサーになったら?ちなみに、この赴任先、私以外のプロフェッサーは全て白人・フランス人(ハーフとかクウォーターはいても、フランス生まれのフランス国籍)でした。フランス語のバイリンガルであるアラブ人ですらいない。(何度も言いますが、人種差別でなく、これがフランス社会の実態です。)そんな中、一人やってきた中国人(アジア人は中国人のくくり)、日本語訛りでフランス語が母語でない先生。

 

はたして、生徒は白人フランス人教師と同じ対応をするでしょうか。もちろん、私の性格やフランス語が完璧でないことなど、原因はたくさんありますが、私が一番苦労したのは、同僚から「優秀」と呼ばれるクラスでした。どうも、下に見られるみたいです。

 

フランス人・フランス語母語話者と同じ職務をこなさなければなりません。試験作成、ノートの添削、ノートを書かせる時の文章、配布プリント、毎回授業後に保護者にする授業の内容報告と生徒の連絡帳に書かせる宿題・持ち物の内容、授業で話す内容、成績表のコメント、成績会議、問題児の裁判的な会議の証人、などなど全ての言語活動に、間違いがあってはならないのです。

 

何度も見直して、ネットで用法を調べ、どんなに完璧にしたつもりでも、間違いはあります。また、ネイティブでないと気づけない違和感(文法があっても、ニュアンスが変)などもあります。

 

私は、フランス語ができるようになればなるほど、コンプレックスを抱えるようになりました。どんなにやっても、できるようになっても、フランス人からは「フランス語ができない人」扱いされ、できなければ「幼稚な話し方」をする人扱いされます。また、心無い人・辛抱の足りない人からは、「はぁ?」って言われる。かなり強制しても、消しきれない訛りのせいで、聞き取れないみたい。

 

辛い。フランス人に拒否反応が出る。話したくない。ストレスたまる。笑えない。

そんな状態を私はフランス語アレルギーだと思ってます。

 

けれど、最近一般企業で働き始めて、少し考えが変わりました。というのは、そもそもラテンアメリカ系の企業だったので、直属の上司がスペイン語母語話者だったのです。お互い英語の方が得意ということで、私と上司とのやりとりは、英語。その上司もフランス語は、ネイティブ並みにできるのですが、やっぱりネイティブでないのはわかります。彼女の仕事ぶりを見ているうちに、私はコンプレックスから、少し抜け出すことができました。

 

語学はツール。仕事のスキルがあって、語学力はネイティブでなくてもいい。もちろん、勘違いしてはいけないのは、仕事に必要なレベルはクリアしている必要はある、ということです。それで、十分ということです。外国語のネイティブレベルとネイティブには、大きな隔たりがある。そこに注目するより、そのレベルのツールによって、通常業務がネイティブ以上にできている時点で、フランス人を束ねるディレクターになることもできる!ネイティブでないことにコンプレックスを持つことはない!ということです。フランス語も怖気付かずに堂々と話す彼女から、多くを学びました。

 

 

 

語学を学ぶ方は、学べば学ぶほど深みにはまっていく自分を感じることでしょう。

また、自分のネイティブ言語での知識量が多いほど、外国語を学ぶ際の語彙の量も学ぶ範囲も広がります。辛さも増えていきます。辛い時には、語学はツールなのだということを思い出してください。それがあなたの価値をきめるわけじゃないんです。

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ブログを始めて、1週間ほどですが、短く完結に伝えるのって難しい。

これから、もっと見やすいブログにできるように、工夫してきます。

よろしくお願いします。