とある民族音楽学者の日記

長年のフランス生活で培ったノウハウをシェアしたいと思います。よろしくお願いします。

音楽留学について①

フランスに音楽留学する際に、まず入れておくべき予備知識をご紹介します。

日本で音楽を専門的に学ぼうと志す場合、音楽大学進学をまず思い浮かべられると思います。実技を大学で学ぶ、ということが日本では当たり前です。

ここが、フランスと大きく異なる点です。何より、フランスの教育制度は、日本だけでなく他の欧米諸国とも大きくことなります。

 

フランスで音楽を学ぶ時に、まず考えなければならないのは、学びたいことが実技を中心とした実践的なことなのか、それとも音楽を学問として学びたいのか、という点です。前者の場合は、専門学校、いわゆるコンセルバトワールに通うことになります。後者の場合は、大学の音楽学部に入るようになります。

 

大学相当の公立のコンセルバトワールは、フランスでは2校あります。パリ国立高等音楽院とリヨン国立高等音楽院です。これらは、Conservatoire National Supérieur de danse et de musiqueで、略してCNSMDとなります。(音楽専攻の人の間では)CNSMと呼んでいます。

それでは、学部相当のディプロムがこの2校でしか取れないかというと、そうとも限りません。フランスの公立校では、そもそも音楽の授業が中学校からしかありません。そこで私が教えていた生徒たちも、楽譜を基本的には読めないのが一般的でした。学校では、実践的なことではなく、知識を身につけ、その他実践的なこと、実技は専門学校で学ぶ、というのが大まかなフランスの学校制度です。音楽・ダンス・演劇を学びたい場合は、別途コンセルバトワールに入ることになります。コンセルバトワールは、どの町にも必ずあります。

基本的には、年中さんから大人まで、ありとあらゆる世代の人がコンセルバトワールに入ることができます。年中・年長さんは、Eveil musicalという個人の特性を見るクラスに入るのですが、それ以外は、第1課程から第3課程に別れています。第3課程の資格にあたるのは、CEM(Certificat d'études musicals)です。ここまでで、アマチュア音楽かとしての能力が証明されます。プロを目指す場合には、この次の第3課程の特別クラス(Cycle 3 spécialisé)でDEM (Diplôme d'études musicals)を取得することになります。

 

日本から音楽留学を目指す場合は、まずDEMを取るのが、ひとまずの目標になると思います。というのも、県庁によってはこれ以上の課程でないと学生と見なされず、滞在許可証が出ないというまことしやかな噂があるからです。(私はそうでなくても、出たことがあります。もう10年以上まえだけれど!)DEMは、小さな町のコンセルバトワールでは取得できず、CRR(地域圏立音楽院)もしくはそれよりCRD(県立音楽院?)でないと取れません。各県に1つあるCRDか、さらに上の単位の各地方に1つあるCRRに入る必要があるということを覚えていてください。

 

日本のサイトで紹介されているのは、主にCRRです。CRRは、年齢制限があるところが多いです。ピアノですと、日本で大学を出てしまうともう厳しいという場合が多々あります。それでも諦めないで、CRDを探してみてください。CRDは、年齢制限がないところもあります。

 

私は学校を探す時に、ウィキのリストにある学校を片っ端から検索して、電話をかけて確認しています。大人になってから、留学を決意なさった方、どうしてもフランスを希望する場合は諦めずに、CRDやCRRを探してみてください。CRDもCRRも取得できるディプロムは同じです。

 

なお、外国の音楽大学制度に照らし合わせた制度もあるので、詳しくはご自身で検索してみましょう。制度がしょっちゅう変わるフランス生活の基本は、自分で調べる!です。