とある民族音楽学者の日記

長年のフランス生活で培ったノウハウをシェアしたいと思います。よろしくお願いします。

夢を叶える人とそうでない人

この10年、フランスに住んで、世界のオペラ座で歌っている人、歌えるようになった人と知り合ったり、間近で見るチャンスがありました。

 

彼らを見ているうちに、なんとなく夢を叶えて第一線で活躍する人と、そうでない人の違いがわかるようになりました。

 

音楽、特に声楽を続けていくためには、生まれ持った声はさることながら、レッスンやオーディションをこなしていくための経済力、いくつもの言葉を覚えることのできる語学力、ある程度身長もあって容姿も美しいこと、演技力、など様々な要素が必要です。

 

プロを目指すレベルであれば、容姿や声が美しいのは当然のこと、プラスαで音楽性や、ソルフェージュの力などなどをみんな当たり前のように身につけています。そこまで磨き上げても、私の周りにも、全てを兼ね揃えていながら、運がなかったり、経済力がなかったりで、苦労をしている人がたくさんいます。

 

ただ、お金がなければ、働くことはできるし、容姿もある程度はお化粧やお洋服で変えられる、演技力や語学は学べばいい。やる気次第で補えることはたくさなります。貧乏な家にうまれたら、恵まれた家庭に育った人よりもずっと後ろからスタートになりますが、距離を縮めればいいだけのこと。それができないのは、家庭のせいでなく、自己責任だと思います。

 

私は、1年だけ、フランスの若手メゾのホープとクラスメートだったことがありました。彼女は身長も175cmくらいあり、細身、フランス人が好きそうなファニーフェイスでとても可愛い女性です。幼い頃から習っていたピアノは、ピアニストを目指せるレベル、何より頭のいい女性という印象を受けました。自信にあふれていて、それが人を惹きつけます。

 

もう一人、パリのオペラ座でコリストの知り合いがいます。彼女も元クラスメートでした。彼女は、上記の女性とは別で、裕福とは言えない移民の家庭に育ちました。何年か飛び級した才女で、生活費と学費のためにフルタイムでとても大変な仕事をしながら、学んでいました。ある時、「歌手になるための勝負をこの数年でつける」と決めて、仕事をやめ、100パーセント歌に集中した結果、数年で目立ったキャリアもコンクール受賞歴もないまま、オペラ座に入団しました。彼女のおかげで、私は、これまで自分が考えていた歌で生活できない理由の全てが、単なる言い訳に過ぎなかったと学びました。

 

 

二人に共通することがあります。それは、こうと決めたら、ぶれないこと。意思の力です。夢の為に、必要なことを選んで、集中できること、これも才能のうちだと思います。

 

彼女たちと学校のコンサートに出ましたが、彼女たちの集中力や仕事ぶりを横で見て、意思の強さ(そして、フランス女性だけに気もかなり強いけど、それも絶対必要)が何より、その他大勢とは違うなと感じました。

 

バレリーナなど、生まれ持った体格が絶対的な職業もあります。けれど、歌は、オペラにこだわらなければ、マイクだってあるし、小さな会場で歌うこともできるし、小さな声でも歌えるレパートリーもあります。そもそもが、そこを本気で見据える時点で、自分の力でどうしようもならない条件は、クリアしているのだと思います。夢が叶わないのは、ウィークポイントを埋められない自分の弱さのせいです。

 

もし何かを叶えたいと願うならば、本気で願って、努力してください。

 

必要な努力の量は、人それぞれ。お金持ちの〇〇ちゃんは、あなたがバイトしてレッスン代を稼ぐ時間を、別なことに使えるでしょう。のびのびそだった〇〇くんの声は、変な発声のくせがないかもしれません。長所も努力量も人それぞれ。だからこそ、目標だけを見て、進んでください。自分に必要な努力ができたものにしか、チャンスはやってきません。

 

その努力量をこなせたら叶う、というような甘い世界でないけれど、それがなければチャンスも掴めない厳しい世界だと思います。意思を強く持ちましょう。

 

 

自分のために、書きました。