とある民族音楽学者の日記

長年のフランス生活で培ったノウハウをシェアしたいと思います。よろしくお願いします。

音楽留学について④〜音楽院の種類

こんにちは。

 

今日は、音楽院の種類についてご説明しようと思います。以前にも書いたと思うのですが、フランスの公立小学校では音楽の授業が行われていませんでした。その代わりにパブリックのコンセルバトワールがあります。

なお、パブリックスクールには、音楽・ダンスを専門的に学びたい子のための特別クラスがあります。それについては、別途説明します。

 

さて、コンセルバトワールには、運営する公立機関の規模によって、いくつか種類があります。フランスの高等教育制度は、日本含め他国とは全く異なる、ということを覚えていてください。近年では、EU圏の交換留学制度も盛んで、おそらくその差異を埋めるため、なるべく「学士・終始・博士」の制度に近づけているような気がします。

 

国が運営するのが、国立高等音楽院(CNSMD)です。国立音楽・ダンス高等音楽院の略称で、音楽科の学生の間では通常CNSM(国立高等音楽院)と呼ばれています。これは、パリとリヨンにしかなく、ここでは日本でいう学士から博士相当の学位を取得することができます。応募者多数の狭きもんなので、入学試験をパスする必要があります。また、年齢制限もありますので、気をつけてください。

 

ここから先は、4才以上ならば学ぶことができる学校になります。国立高等音楽院も4才以下でも、試験をパスすれば理論的には入れます。小学生で国立高等音楽院にパスして、こちらの中学1年(日本の小6)で入学した子を知っています。

 

次に、各地域(Région)が運営するのが、各地域に必ず1校ある地域圏立音楽院(CRR)です。10数年前までは、国立地方音楽院(CNR)という名称でした。学校によっては、年齢制限があります。

 

さらに細かい区分である、県(Département)が運営するのが、県立音楽院(県立音楽院)です。大都市に近い学校は年齢制限がありますが、年齢制限のない学校が多数あります。例えば、パリ郊外の声楽科にかたっぱしから電話しましたが、日本では知られていない学校で、パリ郊外にもたくさんありました。最近では、入試が同じ県立の学校で共通でとる場合があるので、希望する学校に空きがない場合も、別な学校で取ってもらえる場合もあります。逆に、近い町をかたっぱしから受ける、という方法が使えないこともあるので、要注意です。プロとして最低限のレベルを保証する資格(DEM)を取得できるのはこれらの学校までです。希望する学校にDEMを取れる第4課程もしくは第3課程スペシャリゼがあるか、確認しましょう。

 

次に、もっと小さい区分で町や村が運営しているものもあります。DEMはいらない、でもその上の準備クラス(学校によっていくつか呼び名がある)に入りたい場合は、ここでも大丈夫です。一度、CRDで教える先生がDEMは取れない学校で、かつ空きがないということで、町立音楽院で教えているので、そこの準備クラスに入らないかと提案されたことがあります。

 

こんな風に、国立高等音楽院が年齢的に無理という場合でも、チャンスはいくらでもあります。また、DEMを取ってフランスのコンセルバトワールの教授資格(DE)を取得したい、というようなことでなければ、準備クラスを目指すと思うので、町立でも大丈夫です。だいたいそこまでのレベルであれば、先生側も教えたいし、DEMをとるため高校生や大学生くらいになると別な学校へ行かざるを得ないこともあり、学校側も規則を曲げてくれる場合があります。

準備課程は、パーフェクショヌモンと呼ばれる場合もあります。もっと極めるためのクラスということです。(上記の私の例です。そこではパーフェクショヌモンはないが、そういう名目であなたを入れるがどうする?と聞かれました。)

 

真摯に何かを学びたいという意欲のある学生には、極力協力してくれるのが、フランス人だと思います。年齢制限で無理、実力が足りないから無理、と思うのでなく、「自分はどうしてもこの学校のこの先生と学びたい。力を貸してください」というスタンスで行きましょう。